韓国の鉄道に興味を抱かれている方の多くがJTB「韓国の鉄道」（中島　廣、山田　俊英著）をお持ちかと思います。しかし、同書は発行から５年経過し、その後に幾つかの車両が誕生しています。ここでは少しばかりですが、韓国の新型車両について簡単に紹介します。

※間違いや補足などございましたら、どんどん御指摘くださいm(__)m


※その後続編｢韓国鉄道の旅｣が好評発行されましたが、弊ページは補足的にご笑覧頂ければ幸いです^^;;

現在、韓国の車両メーカーは[Rotem][デザイン・リミット][太陽重工業]の3社のみです。

[Rotem社]　現代＋大宇＋韓進の鉄道部門が統合し「KOROS社」となり、数年後さらに社名がRotemに変更になりました。韓国最大の車両メーカーで、高速鉄道や輸出向け車両も製造しています。京畿道富谷の工場は閉じられ、現在は慶尚南道の昌原に工場を持ちます。

Rotem社　ホームページ
http://rotem.co.kr


[SLS重工業社](旧デザイン・リミット)　ヘッテ重工業が社名を変更｢デザインリミット｣社と名前を変えた後、現在のSLS重工業となりました。無窮花号の客車や発電車、貨車などを製造しています。最近では地下鉄電車の難燃化改造にも携わっています。

[太陽重工業社]　最近貨車の製造を始めた会社です。新型有蓋車やバルクセメント車を製造し、長項線沿線に工場を持ちます。


 

8102号　嶺東線　道渓〜東栢山にて

8203号　中央線　清涼里にて

韓国国鉄が従来の電気機関車8000号の後継機関車として軽量＆パワーアップ＆高速化を目指して開発した機関車です。シーメンス社との共同開発によりドイツ国鉄の152型(ユーロスプリンター)をベースにした為、風貌は最近のドイツのELそのまんまです。実際の本線運用は2000年頃に登場し、現在２両が中央〜太白〜嶺東線のセマウル号などに充当されています。なお、この車輌の制御技術の一部が高速車輌HSR-350Xにも継承されています。

8100号は軽量化の為に勾配区間では空転が度々起こった為、その後客車の車内電源用のSIVを搭載等により軸重調整した量産形式8200号台が登場しています。まずは中央・太白線に投入され、その後電化開業した忠北線、湖南線へと投入が広がりました。2007年より全線電化の完成した京釜線にも充当され、ディーゼル機関車から順次交換が予定されています。

清涼里機関車事務所にて

老朽化した入換機関車2000〜4300号の置き換えを目的に製造された国産の電気式DL。2001年頃から製造が始まりました。外観は2000号や2100号のＬ型スタイルを継承しています。また、入換のみならず、貨物列車や小運転の先頭に立つときもあります。

京釜電鉄線　九老にて

老朽化したソウル1号線初抵抗車両（初代1000系）の置き換えを目的に製造された新型通勤電車。それまでの電車とは全く違う丸みを帯びた革新的なデザインです。2002年から製造が始まりました。安山線〜果川線にも同じデザインの電車がいます（こちらの方が先に製造されました）。

ちなみにこのデザインの電車は｢トングリ(韓国語で｢丸型｣の意味/日本語のドングリは全く無関係)｣との呼び名があります。

京釜電鉄線　九老にて

老朽化した74年、76年度製造の初抵抗車両（初代1000系）の廃車により余剰となった中間車（T車）を先頭車に改造した車両です。2002年頃から数両が改造され、運用に就いています。
 

京釜電鉄線　新道林〜九老にて

拡充路線への車輌投入と老朽化した抵抗制御電車の置き換えを目的に2005年に登場した通勤電車。「トングリ」車輌から更に進化した奇抜なデザインは仁川空港鉄道の電車同様、Rotemのデモ車輌「XG」を基本に作られました。省エネ性や居住性の向上、不燃化など数々の改良がなされています。
この車輌は従来の5000系を継承する｢交直流｣車(地下鉄1号線乗り入れ可能)と、コストダウンのために直流機器を搭載しない6000号台｢交流専用｣車(地下鉄区間乗り入れ不可能)があります。

なお、九老電車区の一部の乗務員より「マティズ」と言う愛称で呼ばれています。

マティズ(Matiz)：韓国のポピュラーな軽自動車の名称。この電車のつり目のライトや丸っこい形状がマティズに似ていることから名付けられたそうです。

ソウル列車事務所にて

老朽化した無窮花号の客車の置き換えを目的に製造された国産の客車。デザイン・リミット社(現:SLS重工業)にて2001年頃から製造が始まりました。外観は連接窓の斬新なスタイル。乗降扉には韓国国鉄のマスコット「チポチポ」をあしらっています。この車両は韓国の多くの路線で無窮花号の運用に就きつつあります。

全羅線　順天にて

老朽化した従来の寝台車の入換を目的に上記のリミット客車同様に製作された寝台車です。外観はベッドそれぞれに小窓がついたスタイル。寝台内部はJRのサンライズのシングルのように進行方向にベッドが向いています。車齢は浅いものの、残念ながら現在は定期運用から離れ、今後の動向が注目されます。

「Hi-Oneスキー列車」仕様　ソウル駅にて

2004年に登場した観光専用列車「TLX」に4両の客車を追加して完成した団体専用列車。改造元は使用されなくなった無窮花号の特室客車(ヘッテ特室)を使用し、個室やイベントスペースなど楽しい旅を演出する構成となっています。

画像は2006年〜2007年の冬季に運転されたスキーリゾートとのタイアップ「Hi-Oneスキー列車」仕様ですが、基本はその名の通り赤地に黒い水玉模様をあしらい、てんとう虫のイメージになります。

韓国鉄道公社ではこの他にセマウル号食堂車を改造した「ワイントレイン」も活躍しています。
 

セマウル号を元に生まれたVIP専用車両です。現役の車両ですので韓国の国家保安上の理由により外観、詳細、諸元等は公開できませんが、2002年に金大中・韓国大統領がジョージブッシュ・アメリカ大統領と都羅山駅を視察した際に、金大中大統領が使用したことでその名が知られました。

韓国のVIP車両は鮮鉄の展望車を改造したものなどが幾つか存在し、儀旺の鉄道博物館でその一部を見る事が出来ます。

 

忠北線にて　Photo by Triple7

在来線の高速化と老朽化したセマウル号気動車の置換え用として2006年に試作された韓国初の振子特急電車(試作車)。2007年3月にようやく車輌が搬入され、韓国鉄道技術研究院(KRRI)にて試運転・各所データの収集が予定されています。

TTXは日本で言うところの591系電車に近いニュアンスの実験的な要素を持っています。量産車が登場すればセマウル号に替わる在来線の花形列車としての活躍が期待されます。ちなみに振り子車輌は韓国では「ティルティン列車」(Tilting列車)と呼ばれます。

TTXは今後投入予定の無窮花号電車(日立製)と共に、それまで客車主流だった韓国の長距離列車に電車化の新風を吹き込もうとしています。かつてのEECから実に四半世紀ぶりの新型特急電車の登場に韓国内の鉄道ファンからも熱い注目を浴びています。
 

KTX（Korea Train Express）はTGVをベースにした韓国の高速車両。フランスTGVと同じで前後動力式、中間車は連接台車となっています。現在はソウル〜釜山(東テグ〜釜山は在来線乗り入れ)、ソウル〜光州(西大田〜光州は在来線)、ソウル〜木浦(西大田〜木浦は在来線乗り入れ)と数年後の全面開通後はソウル〜大田〜大邱〜慶州〜釜山のルートを最高速度３００Km/h超、２時間台で結びます。

この車両は2002年、韓国Rotem社によって製造された国産の高速列車です。TGVから派生した前後動力集中〜連接中間車の流れを汲んでいます。最高速度は350Km/h！この車両は日本で言う｢FASTECH360｣｢STAR21｣｢300X｣｢WIN350｣に相当する車両で、今後の新しい列車の開発の為に高速鉄道五松基地を拠点に試運転が行われています。

※登場時は「G7」と呼ばれていましたが、現在、鉄道ファンの間では「HSR350X」の呼び名が一般的だそうです。

日本と韓国（の鉄道ファン）では鉄道車両呼称が違います。韓国のファンとコミュニケーションを図る場合、「1000系」や「9900系」という表現は通じません（日本の車両だと思われてしまいます）。韓国の鉄道サイトをネットサーフィンされる場合は以下の一覧表を参照いただければ幸いです。なお電車については編成番号で「1ｘ01編成」と言う呼称もあります（[1x01]=1000系の各車番号の下２桁が01の編成）

HOME